GOOD.HACKER.INC CEO 津下亮平氏

 

意識が高くない学生だったからこそ、今の起業につながっている

 

-改めて、敢えてレールを外れるという選択肢をとれたのはなぜだと思いますか?
今があるのは意識が高くなかったからだと思います。多分、大学時代に意識が高くて海外に出て行っていたら、そこそこいい会社に就職して、不満を感じることなくセブに来ることもなく生きてきたんじゃないかなって思います。逆にいうとそこまで一生懸命就職活動をしていなくて、つまらない会社に入ってしまったから、自分でなんとかしようと動けたんだと思います。

 

-セブに来て感じましたが、日本で成功してから来ている人がおおいですよね
若者世代は、日本での経験を問わずいきなり来て起業しているケースが多いんですが、東南アジアに出て行く40歳以上の方は日本で成功を収めていてこれから海外で勝負しようとしている人たちが多いので、そもそもステージが全然違います。

 

-現地採用で働く日本人は増えているんですか?
増えていると思いますよ。留学を終えてそこから働く人が多いですよね。セブで就職希望している人は、留学をしてセブのことが気に入ったとか、英語がなまらないように使い続けていきたいという人が多いです。

 

-現地採用で働く機会を作ったものの、辛くなって帰る人もいると伺いました
なんだかんだ多いですよ。2極化するんですよね、やっぱり。現地採用の環境をうまく利用できない人は、結局どうすることもできずに日本に帰るしかないと思いますよ。積極的に動けるかどうかですね。

 

相対的に貧しくなっている日本でどう生き延びるか

 

-英語の資格がどれくらい必要だと思いますか?
何を目的にするのか次第だと思います。あるに越したことはないと思うんですけど、例えば英語を使って東南アジアでビジネスをしたいのであれば、TOEICガリガリやるよりもしゃべるしかないんですよね。ただ、僕も痛感してるんですけど、ちゃんとした英語文法とか単語とかベース知識は必要になってきます。

仮に、TOEICで何点以上なければ何も始められないというようなネガティブな印象があるんだったら、もったいないですよね。実際にコミュニケーションに使う英語って全然別ですから。ある程度は、コミュニケーション力で何とかなります。もちろんイギリス人とやるんだったら別ですが、東南アジアってそこまで英語を厳しくチェックしてこないので、聞き取れて伝えられるレベルがあれば全然なんとかなりますよね。それに発音も含めて僕はかなりフィリピン英語ですからね。でもその方がフィリピン人には伝わるんですよ。

 

-最も尊敬する日本人は誰ですか?
尊敬する日本人は高城剛です。すごい好きなんですよね。彼の生き方が。本も面白いですよ。以前お会いすることができて世界就職についてお聞きしたら、「就職したことないからわかんない」って答えられました笑。有料メルマガも抜群に面白いですね。

 

-現地人から恨み買う可能性を考えると怖くないんですか?
そうならないようにコントロールしますよ。すごくドライな会社も多くて、すぐにクビにしたりするようなところで日本人が訴えられるっていうケースもあります。雇用契約とか、弁護士との交渉をしてディフェンスをしっかり組んでいます。こちらでは、6か月以上契約していると正社員になってしまうんですよ。正社員にすると簡単にはクビにできません。だから、会社によっては契約期間を6ヶ月にしてしまって、期間満了で契約を終了させるケースもあるし、プロジェクト単位で契約して正社員にならないようにするとか色々やっていますね。
うちは、信頼できる人間を少数精鋭で雇っているので大丈夫です。

 

-今後の日本はどうなると思いますか?
そんなに明るい未来は描いていないですよね。そもそも若い人が少ない。僕が来た頃って1ドルが80円くらいだったんで、2000万円くらい貯金があったとしたら、今はその価値が1400万円くらいになってしまうんですよね。日本を出ていない人は、円安円高っていう考え方に馴染みがないと思うんですけど、円が安くなるっていうのは、円の価値が低くなって、相対的に日本がどんどん貧しくなってしまうっていうこと。僕らの世代なんて特に、給料が年功序列で上がっていかないじゃないですか。給料が上がらないのに物価が上がっていくんですから、大変ですよね。

 

-雇用も担保されなくなっていきますよね。
僕ももうプログラマーはできないです。日本で月40万円レベルの技術者が、こっちでは5万円もあれば雇えるので、日本人が同じ土俵で闘えるかというと、本当に難しいです。外国人にとって日本語が日本で働くための高いハードルになっていますが、いずれ崩れてしまうと思います。そうなったときはかなり危ないですよね。

 

-日本語という壁が壊れたときに生き延びるすべとして何が必要だと思いますか?
環境をうまく利用できるかどうかだと思います。フィリピンは今、外資をたくさん呼んでいます。日経企業がフィリピン人を安く使っているわけですよ。それが逆転して日本で起こる可能性があるわけですよ。ひたすら同じ作業をして日給600円とかで働く人がいるわけです。働き甲斐とかいえる世界じゃないですよ。本当に単純労働で。

そんな仕事がもしかしたら日本に来るか、あとは逆に円が安くなれば、外国人がたくさん日本に来るかもしれない。そうすると外資系の企業がやってくる。そこで、何が必要かといったら、英語が話せて、外資の人とネットワークを築くことですね。マーケット感覚が大切なんじゃないかと思います。

 

1年前と同じことを言う現状維持をしないために

 

-チャンスを掴むために必要なのはどういうことですか?
とりあえず、動くことですね。面白そうなイベントがあったら僕も人を誘ったりするんですよ。でも、結局参加しないんですよね。知らない人と話したくないとか、遠いとか理由をつけて。

その場その場で何かを感じられる好奇心があるかどうかじゃないですかね。そこで動けない人は、現状から変わらないです。今も日本の友達と会った時に、彼らは1年前と同じこと言ってますからね。
さびしいなと思うことではあるんですけど、やっぱり距離って出てきちゃうんですよね。自分がいるフィールドが違う方向にいくにつれて仲良かったメンバーとのギャップがどうしてもでてきて、だんだん話がかみ合わなくなるっていうのが正直あるなと思います。寂しいことですけど、今更そっちの世界には戻れないっていうのもあるんですよ。

 

-自由にやっているからこそ、辛い部分もあるんじゃないんですか?
辛さはないですね。マインドが本当に変わったんですよね。経営者の人たちって仕事を仕事だと思ってない人が非常に多いんですよね。遊びの延長線上みたいに感じてる人が多いんです。経営者のマインドを持てって社員に求めるのは無理だと思いますよ。

 

-海外に出るという感覚は変わってきている感じがしますよね。
40代以上の経営者達と話していて思う日本人と、僕らの世代の日本人ってちょっと違うんですよね。日本というものへの考え方もちょっと違う。僕の感覚でいうと、例えば田舎から東京にきたくらいの感覚でセブにいます。ただ、40代くらいの方にすれば、もっと大きいことのように感じます。僕らの世代は海外に出る、働くってそんなにビックリするようなことでもない気がします。

 

-おっしゃるとおり、国を超えることのハードルは下がっているかもしれないですね。
ハードルを上げすぎなんですよね。海外っていうだけで重く考えすぎなくていいんじゃないのって思います。海外で働いているっていうとすごいっていう人がいますけど、大したことない。というか、何とでもなっちゃうよっていう感覚ですよね。フィリピン留学もそうだったなと思うんですけど、いい機会だと思うんですよね。

日本にいたときに会えなかった地方出身の人とか、全く知らない業界で働いていた人とかに触れ合う機会が多い。しかも上司じゃないから上下関係はないですし、それだけでも新しい経験です。いろんな人と会った方がいいんじゃないかなって思いますよね。そこで得るものがたくさんあるんじゃないかなと思います。

なんでもwebで情報収集できていると思ってしまうけど、実際行ってみると全然違うっていうことがあります。ネットで得た情報と自分で体験して感じるのって絶対違うんで、生で感じて考えるっていうことがとっても大事なんじゃないかなと思いますね。

 

-普段意識している座右の銘とか好きな言葉はありますか?
あんまりないんですよね。座右の銘って。基準は直観です。直感は、経験で鍛えるしかないんだと思いますね。あと、あんまり迷わないようにしてるっていうのがあります。迷ってばかりだとブレるじゃないですか。後悔しないっていうことを決める。自分の決断に責任を持つっていう感じですね。決めたことはグチグチ言わないようにするようにもしています。

 

割りきって、直感に従って飛び込んで見ることから始まる


-若さも一つの武器だと言われますよね。

僕もこの年で起業してるんで、割とみんな優しく教えてくれるんですよ。若いうちだからこそ、いろいろ経験が詰めますからね。

 

-現地採用だけで培ったスキルで起業ってできると思いますか?
うーん。やっぱり専門知識は元々あればあるに越したことがないですね。社会人として日本で働いていた経験が生きる場面って必ずあると思うんですよ。

こっちはまだ整っていない産業があるじゃないですか。建築なんてひどいですから。セブで施工管理が回せるのであれば、それはすごいスキルとしてこちらで重宝されます。逆にそういった能力が全くなかったらコールセンタースタッフ以外のことができないかもしれません。

 

-新卒で海外よりも日本で就職した方がいいということですか?
今のタイミングで何がいいのかわからないですよ。新卒で海外に来るっていうのは今の日本を見るとありなのかなって思うんですけど、時代によってもちろん変化すると思います。

現地採用で給料安いとはいっても、若かったらそれも経験だと思ってやれます。30歳、40歳になっちゃうと後戻りもし辛いじゃないですか。若者だったら割り切ってやっちゃうのもありですよね。

 

-若者へのメッセージを
まずは、動いてみるしかないと思います。何でもいいんです。
ただやっぱり周りの友達に聞くと、会社を辞めるってことに思い悩んでたりしますよね。

辞めればいいじゃんって思いますけどね。なんでそんなにナーバスになってんだろうなって気がするんですけど。次どうするか、ということに不安を抱くのもわかります。僕は結構楽天家なのかもしれないですが、目標を決めて直感に従って動いていれば何とかなるんじゃないかなって思います。

 

<編集後記>
新卒で入社した会社を半年足らずで辞めた理由に使われた
「飽きたから」という言葉。
この裏には、「IT」や「英語」というこれからの時代に
必要とされるものを選んだという意思の強さを感じた。

年齢が1つしか変わらない津下氏。
彼が海外に出たタイミングは約3年前。
そこから出会った方や、得てきたチャンスの多さは
きっと国内で3年過ごすよりも多かったのだろう。

新しい情報をキャッチする早さと、
そこから動くスピードがもたらす変化について、
飾ることなく語ってくれた。

そして、それは
「1年前と言っていることが変わらないのはつまらない」
という言葉にも表れている。

私も、日々多くの変化を経験し
新しくワクワクする世界に触れられるように
動くことを止めないでおこうと思った。